たまに日本の不動産購入セミナーでマンハッタンの新築物件(ニューデベロップメント)の購入を勧められたという話をクライアントの方から伺います。
Tax Abatement(タックス・アベイトメント)と呼ばれる不動産税の優遇策による安い不動産税があるのが魅力だと言われたという事なのですがこれには注意が必要です。
Tax Abatementにはいくつかの種類がありますが、新築物件を購入する際に多いのは421Aというタイプ。
例えば工場として使われていた土地にデベロッパーが新しい集合住宅を建てると、ニューヨーク市にとってはその土地からの税収入が一気に上がり増税効果があるため、これを推奨するインセンティブとして、要件を満たしている新築物件に対して、税金の免除をあたえるのが421Aです。
税金の免除はビルディングの開発に対して行われますので、ビル内のユニットをコンドとして購入したオーナーは、一定期間、Property Taxが安くなるというメリットがあります。
例えば周辺のTax Abatementない同じようなコンドのProperty Taxが月350ドルなのに対し、Tax Abatementが適用されているユニットの場合、月5ドル・・・というような具合です。
物件の購入者にとっては月々の支払いが抑えられるわけですから大きなインセンティブとして働きますが問題はその適用期間と期限が切れた際の税金です。
2007年までは25年という長期に及ぶTax Abatementを許可していましたニューヨーク市ですが、現在では非常に取得しづらくなり、許可されるTax Abatementのほとんどは15年、マンハッタンの多くの物件は10年という短いものになってしまいます。
例えば10年のTax Abatementの場合、3年目からタックスの額は2年毎に20%上がっていき11年目からは減税効果がゼロになります。
15年ものの場合には最後の5年間に毎年20%上昇していく仕組みで、これは25年ものの場合も同様です(左のチャート参照)。
例えば2011年に建てられ15年のTax Abatementが適用・スタートしている物件を新築で購入した場合、そこに10年住むとその次の年、つまり11年目からは税金が20%づつ上がっていくわけです。
ということは、この物件を購入してから10年後に売却しようとした場合、Tax Abatementは5年しか残っていないわけですから、次に購入者する人にとっては、購入後から税金が上がり続けることになります。
そしてこれは特に税金が高額であるマンハッタンのコンドミニアムにおいては大きな問題になってきます。
下の記事はNew York Timesが2011年に掲載した記事ですが、例えば2007年の物件購入時に月$35であった税金が、Tax Abatementの期限が切れる2018年には、月$1,629の税金になる例や、購入時には月$258ドルの税金であった497 Greenwich St Apt. 7Bの税金が、2011年時点で$2,778ドル、そしてTax Abatementが完全に切れた今年は、なんと月$3,675になるという例が載っています。
このことはもちろん物件価値にとってマイナスに働きますので、インベストメントとしての物件購入時にはTax Abatement を正しく把握することは非常に重要であり、特に10年、15年のTax Abatement しかついていない場合には、販売時期を含めた投資戦略を十分に練っておく必要があるということになります。